た、森にいました。でも何だか様子がおかしい。
全てが巨大。いや、逆なのでしょうか。
気がつけば、大きな蜘蛛の巣のベッドで、
虹色のトンボの羽を畳み、休んでいました。

『大きいとか、小さいとか、それは全てまやかし。
キミは大きくもあるし小さくもある。
僕を思い出せたら自由自在なのだ。』


心の中心から、ふわっと言葉が湧きあがります。

蜘蛛の巣のベッドに揺られて、その言葉を噛み締めていると、

突然「そうなの!トンボの本当の姿は、ドラゴンだったの!」

と、何故かハッキリと思い出したのでした。

それが、中心のメディスン(トンボ)と
上のメディスン(蜘蛛)との出会いでした。


ANIMAL MEDICINE LIST


● トンボ   Dragonfly

‐幻想‐

トンボは英語で、Dragonfly。

面白いことに、ネイティブアメリカン達も、
この空飛ぶ昆虫を Dragonの化身と考えていました。

七色に輝く、トンボの羽の模様のような鱗を持つ、
ドラゴンです。

多彩なエレメントを操り、神秘を司る偉大なドラゴンですが、
ある日、大きくなりすぎて、 住処の戸口に挟まり、
身動きできなくなりました。

そこに、トリックスターのコヨーテが現れ、こう言います。

『 キミは偉大なドラゴン。どんな姿にだってなれるのだろう?
小さな虫になれば、戸口どころか鍵穴だって抜けられる。
今まで行けなかったところにも行けて、新しい世界が覗けるよ。 』

その言葉に、早速ドラゴンは、変身しました。

その姿がトンボです。

しかし、質量をあまりに変え過ぎた代償で、
記憶を失ってしまい、ドラゴンであることを忘れてしまったと言います。

ある意味で人間は皆、誕生の時、産道(さんどう)を通る瞬間、同じような経験をして、
生命の本性である、無限の自分を忘れてしまうのです。

トンボは虫の姿という幻想から自由になり、大いなる神秘としての
自分を取り戻す道を伝える、風のメディスンです。

● 蜘蛛 Spider

‐機織り・創造すること‐

ホピ族など、ネイティブアメリカンは、 8字型の蜘蛛の姿を見て、
彼らを言葉と数を生み出した存在だと考えました。

さらに、その螺旋と放射状に編まれる美しい巣は、
世界や宇宙を表す曼陀羅でした。


それゆえに、蜘蛛は言葉と事物の繋がり(縁起)を操作し、
世界を紡ぐ、古い創造主とされてきたのです。

蜘蛛は自らが望めば、どこにでも、大小様々な巣(世界や物語)を作る事ができます。

巣にかかる獲物は、その世界の理が見えず、見えない糸に絡め捕られてしまいます。

ですが、その作り手である蜘蛛は、糸に絡まることはありません。

でも自分の巣にこだわり過ぎ、いつでもそれを作り直したり、
新たに作れることを忘れてしまうと、自らの罠に閉じ込められてしまいます。

全ては言葉と数で編み出される‥‥という創造の本質と、
一方で、自らが編み出した世界観、価値観に、
囚われてしまう可能性を暗示するメディスンです。


人は、概念を通して、世界を受け取り、創造を行いますが
それにとらえられて身動きができなくなる事もあるのです。

このメディスンを持つものは、
文章や数のセンス・才能があるドリームメーカーでもあります。


ネイティブアメリカンのドリームキャッチャーも
蜘蛛の教えが由来です。