マの言葉に従い、洞窟で休んでいると、奥のほうが、仄かに光っているのに気が付きました。光苔が道を照らし、まるで導いてくれているかのようです。その光に誘われて、どんどん進んでいくと、とうとう洞窟を出てしまいました。

そこは、美しい夜の森でした。

辺りを見回していると、背後から大きな影が近づいてきました。

それは、熊と同じくらい大きな、ヤマネコでした。

彼はただ、黙って佇んでいるだけ。

でも、不思議なことに沈黙の中に想いが伝わりました。

『世界には語るべき事と、語らぬべき事がある。
沈黙の中でこそ伝わる言葉もあるのだ。

精霊の森は、沈黙の知恵に触れたものだけが辿り着く
お前の深淵。お前の真実が囁く場所。生命の源。

敬意を知らぬものには、この秘密を伝えてはならない。

ワタシがキミの北のメディスン。知恵が眠る場所。
ワタシに触れれば、もう寒さには震えはしないだろう。
さらに北への扉が開く。』

そこは、初めてだけど、心休まる森でした。

沈黙の中に、満ち溢れた豊かさがある森です。


ANIMAL MEDICINE LIST


● オオヤマネコ Lynx

‐秘密・沈黙‐

オオヤマネコは、忘れられた神秘の知恵とその秘密を保持するアニマルです。

彼らは、大いなる沈黙へ入る道を知っているので
時間と空間を自在に行き来して、
どんな不思議だって解き明かす力があります。

その神秘は、人が日々生きる赤い道とは異なった、
隠された青い道にあります。

それ故に、オオヤマネコは簡単には、秘密を教えはしません。

訪れる旅人に謎を知る資格を問う、エジプトのスフィンクスは
ライオンではなく、オオヤマネコだとも言います。

大切な真実は、軽々しく言葉にせず、相手を見極め、
資格があるもの、つまりその秘密に
心からの敬意を払うものにだけに、
伝えることが大切だと教えるメディスンです。

心無い野次馬や、欲深いもの、世界を恐れからしか見ない者は、
隠された神聖なものを台無しにしてしまいかねません。

彼らに対して語る言葉は無く、沈黙の微笑みを浮かべ
立ち去されば良い。そうオオヤマネコは伝えるのでした。